01. 賃金・不払い残業などに関する相談

Q.1 給料の支払いが遅れて困った!

給与の支払いが遅れて困った!
最近給料の支払いが遅れ始めました。現在2カ月分の延滞にまでなって、困っています。

Answer

(1) 賃金支払いの5 原則について
賃金(給料) は、その賃金が労働者の手に確実に渡ることが最も重要です。
まさに賃金は労働者にとって、命綱といえます。そこで労働基準法(以後、労基法)は、賃金の支払いについて通貨(現金) で直接労働者にその全額を毎月1回以上一定の期日を決めて

 

Q.2 今までの損失分をさかのぼって請求できる?

昨年、労働組合を結成しました。同じころ、不況のため、本給が減額になるとの通告がありましたが、給与明細を確認すると、残業単価が少し上がっていました。残業単価を上げる分、基本給を下げたとの説明も何もありません。今までの損失分をさかのぼって請求することはできますか?

Answer

組合結成のご努力に敬意を表します。 今ほど、労働組合の存在価値が問われている時はありません。「働く者の仕事と暮らしと生命を守る」のが労働組合の基本的責務であり、組合員が労働組合に加入する最大のメリット、期待でもあります。
労働組合が自立し、強い団結力と組織力を持つことで、この期待にぜひ応えてください。

さて、あなたのご相談ですが、「労使関係の基本」の問題になります。 
労使関係の基本は

1.労使対等を基本とし、労使自治の原則に立って主体性と責任ある労使信頼関係を目指すこと。 
2. 団体交渉に当たっては、労使双方とも当事者能力を発揮し、責任ある対処を行うこと。また、話し合いを重視し、相互理解と納得のもと事案解決を図るよう、努力するとともに、労使間で結論を得た事項については、双方これを遵守すること。

この労使関係の在り方についての労使合意が、活動の基本でなければなりません。
ご質問にある賃金の減額も残業単価の見直しも、さらには損失分の請求も、重要な労働条件の変更に当たりますので、事前に変更の必要性などについて労使間で協議し実施するという営みが必要です。通告だけでは話し合ったことにはなりませんので、会社のやり方は現状では労使関係無視ということになります。 

まず、労働組合の働きを高めていくためにも、「労使関係の基本」について労使間できっちり話し合っておくことが先決でしょう。 

単独での組合の場合、労使関係や組合運営などについてわからないことも、多々あるかと思われます。そういったときに頼りになるのが産業別労働組合で、私ども情報労連もその一つです。貴労組においても条件が合うならば、ぜひ産別加盟を検討してみてください。

 

Q.3 退職後でも過去の残業代は請求できますか?

残業代について教えてください。 
どんなに残業しても、毎月給料が変わりません……。今月で退職することにしました。退職後でも過去の残業代は請求できるのでしょうか?その場合、いつまでの残業代が請求できるのですか?また、残業代は通常の賃金の2割5分増以上とあったのですが、基本給から計算するものですか?

Answer

サービス残業の問題になります。 

その対処の基本は法的根拠によりますので、まず、サービス残業の法的側面を申し上げ、次に具体的対処方法について、お答えします。

(1)時間外労働について 
労基法では32条で法定労働時間を1週40時間、1日8時間と定めています。この法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には、36条に基づいて事業場の過半数の労働者で組織する労働組合か、労働者の過半数の代表者との労使協定を締結して、労基署に届け出た上で、協定の定めた範囲内で行わなければなりません。この場合、時間外労働に関する労使協定を締結せず、時間外労働をさせた場合や労使協定(通称、36協定といいます)の範囲を超えて労働させてしまった場合は、労基法32条違反になります。 また、36協定で定める法定労働時間を超えて労働させられる時間については、1カ月45時間、1年360時間など時間外労働の限度基準が定められています(平成12年度労働省告示120号)。 

(2)割増賃金について 
労基法37条では、時間外労働または休日労働をさせた場合には、割増賃金令により、時間外労働については2割5分以上の、休日労働については3割5分以上の賃金を支払わなければならないとされています。また、1カ月の時間外労働が60時間を超えた場合は、5割増しとなります。 この場合、時間外労働とは、法定労働時間を超えて労働させた場合の労働時間をいいます。 

(3)サービス残業について 
以上のように、時間外労働をさせた場合や、休日労働をさせた場合には一定の割増賃金を支払わなければなりませんが、これらの賃金を支払わずに労働させることを一般的に、「サービス残業」といいます。これは労基法37条違反となりますから、違反した使用者には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が設けられています(労基法119条)。
以上がサービス残業の法的根拠になります。 

ところで、サービス残業の不払い賃金が社会問題化しているのは周知のとおりで、私どもの相談も、後を絶ちません。サービス残業が労基法違反であるばかりでなく、過酷な長時間労働による過労やストレスで、過労死や自殺に追い込まれるケースが急増しているからです。 

監督官庁である厚生労働省も、労働時間が表に出ないサービス残業をされると、どんな法律や対策も無駄になると指摘し、悪質な事業者には司法処分も含めた厳正な対処をしていくと警告しています。残業代が支払われなかったとして、東京都内の労基署が勧告、指導した企業は2010年度で、1,386社、未払い賃金は123億円にのぼり、その結果11万5,000人が支払いを受けているのは、まさに象徴な事柄です。労基署は基本給に残業代が組み込まれたり、労働時間に関係なく残業代が一定額に固定されたりした企業が目立ち、デフレ不況が長引く中、経費を切り詰めたいとする安易な経営姿勢を指摘し、多くは会社内部からの申告や情報提供が発端となっていることから、労働時間の適正な管理に労使双方が取り組んでほしいと呼び掛けています。 

あなたの会社の実態もその例外ではなく、会社のやり方は明らかに"残業隠し"の労基法違反になります。 

(4)対処策について 
そこで具体的対処方法ですが、まず会社に対し、残業代の支払いがどうなっているか明確にさせなければなりません。おそらく、基本給や手当の中に割増賃金が含まれているので残業代は支払わないと言うでしょう。

この点については、残業代を定額の手当で支払うことを全く許されないわけではありません。所定の手当の中に割増賃金が含まれているというためには、労働協約、就業規則(賃金規程)、労働契約において、手当のうち、いくらが割増賃金の分なのかについて明確な定めがあることが必要になります。従って、何の定めもない場合や手当の中に含まれている割増賃金の額が不明確な場合は、手当の中に割増賃金が含まれているという主張は認められません。 

残業代不払いは労基法違反であり、この割増賃金は当然に請求でき(賃金に関する消滅時効は2年)、その計算式は「所定賃金÷月間所定労働時間×1.25×時間外労働時間数」になり(労基法施行規則19条)、賃金の消滅時効期間は2年間(労基法115条)ですので、退職後も請求できます。 

請求方法ですが、残業代請求の裏付けとなる証拠収集(労働時間管理記録、業務記録、タイムカードなど)が決め手になります。

1. それをもって経営者側(社長)と交渉してください。
2. 経営者側と掛け合ってもらちが明かない場合は、労基法違反を取り締まる最寄りの労基署にご相談ください。専門の職員が相談に乗ってくれ、場合によっては会社に勧告や指導をしてくれます。

自らの問題は自らの力で解決していくしかなく、大事なのは闘う勇気です。
仲間に呼び掛けるなど相談・工夫し、皆の意見として勇気を持って、会社の不合理にチャレンジしてください。

 

Q.4 ボーナスが出ていません。契約と話が違う!

雇用条件の相談です。正社員でボーナスは年4回という契約でしたが、現在ボーナスが出ていません。使用者は、連絡もなしに、勝手にボーナスをカットしてもいいものなのでしょうか?また、採用時の雇用条件は口約束ですが、それを主張できるものですか?

Answer

サービス残業の問題になります。 

その対処の基本は法的根拠によりますので、まず、サービス残業の法的側面を申し上げ、次に具体的対処方法について、お答えします。

(1)会社に就職が決まるということは、就職しようとする人(あなた)とその会社(使用者)との間でこういう条件で雇う、雇われるという約束が交わされることを意味します。 
この約束のことを労働契約といいます。もし、仕事の内容や賃金など労働(雇用)条件があいまいなまま労働契約を結んでしまうと、実際に働いて見たら「こんなはずではなかったのに」ということになってしまいます。 

(2)そこで労基法では、会社は労働者を採用するときに、賃金や労働時間などの働く条件(労働条件)を明示しなければならないと定めています。 
特に、1)労働契約の期間、2)働く場所と仕事の内容、3)働く時間、休日、休暇、4)賃金、5)退職などに関する重要事項は、書面で明示しなければならないと定めています(労基法15条)。また、労働契約法では、「使用者は労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について労働者の理解を深めるようにするものとする」「労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認する」と定めています(労契法4条)。

(3)労働契約の基本は以上のとおりですが、常時10人以上の労働者を使用する会社は、労働条件を労働者一人一人と話し合って決めることが困難なため、集団的、画一的に定める就業規則を作成し、監督官庁の労基署へ届け出る(労基法89条)とともに、労働者に周知(労基法106条)しなければいけません。 
従って、就業規則がいわば「職場の法」として従業員全員に適用されることになります。民法の契約自由の原則(契約締結、契約内容決定の自由)により、口約束も契約ですが、トラブルを防ぐため、以上のように労基法と就業規則、そして労働組合がある場合は労働協約で守るべき働く条件が決められています。 
さらに労基法のほとんどの規定は、会社はこうしてはならない、こうしなければならないと義務付けをし、弱い立場の労働者を保護しています。もし違反した場合には、罰則が適用されることになります。さらに、労基署は会社がこの法律に違反しないように取り締まりや指導をしています。以上が働くルールです。

(4)そこであなたのご相談ですが、労働条件が約束と違うという問題になります。 
やるべきことは次の2点です。 

1つ目は、就業規則(従業員は、自由に閲覧できるように、職場に備え付けなければならないことになっています)をよく読み、採用後1年未満の社員への支払条件などもある場合もありますので、労働条件がどうなっているかを確かめることです。念のため、職場の他の人にも支給の有無を確認してください。 

2つ目は、就業規則の定めが約束(給与やボーナスなど)と違っていれば会社に約束を守るよう、要求することです。 

あなたのケースは、あなたにも不備がありますが、会社の採用のときの労働契約法(4条)に基づく説明が足りなかったように思えます。誤解や行き違いがあるかもしれませんので、疑問点は会社と率直に話し合うことが大切でしょう。

Q.5 賞与の支給日は変わることがある?

昨年の夏の賞与は6月に出ていましたが、今回は7月に入ってからになりそうだと聞きました。会社側からは賞与の支給日に関しては特に何月との説明は受けていません。賞与の支給日が変わることはありえるのでしょうか?

Answer

賞与支給日の変更について 
賞与は月々の賃金と異なり、「支給金額・支払日」が変更されることがあります。金額は、生活給的要素と利益配分要素が加算され、さらに個々の評価査定配分が加味されます。支給日はおおむね決まっていますが、会社の資金繰りや評価査定配分などで時間を要する場合があるからです(会社によって異なりますが、予定された1週間前後の幅のようです)。

Q.6 成果型職能資格給制度とは?

会社が成果型職能資格給制度を導入すると発表していますが、どういう制度なのでしょうか?

Answer

ご相談は、経営環境の変化に対応した人事・賃金制度の改革の問題になります。紙面に限りがありますが、せっかくの機会ですので、制度導入の背景、制度の仕組みおよび運用に当っての問題点についてアドバイスします。 

(1)成果主義賃金導入の背景について 
これまでの日本の賃金制度は、年功給を処遇の中心に捉えてきました。若い間は仕事量に比べて低い賃金で甘んじるかわり、中高年世代になれば、仕事量より高い賃金を手にできるという制度です。高度成長期には若い世代を大量採用するには便利な仕組みで、その象徴が定期昇給制度です。誰でも、1年後には一歳年長者の賃金水準に追いつけるという、いわば年齢と勤続年数に偏重した制度といってよいでしょう。 

しかし、高度成長期に大量採用した社員をこの制度で処遇をしていけば、生産効率は上がらず、人件費負担も並大抵ではなくなります。一方、会社が激しい変化に的確に対応し、勝ち残っていくためには、1)主体的に判断し、行動のできる人材、2)変化にチャレンジし、高い目標を掲げ挑戦できる人材、3)世の中に通用するスキルを持った人材が求められます。成果主義賃金については、法的な定義はありませんが、多くの企業が導入に踏み切っているのは、こうした総人件費の抑制と社員の活力を高めるという背景事情によるもので、あなたの会社もその例外ではないのでしょう。

(2)制度の仕組みについて 
1. 成果主義賃金のモデルはいくつかありますが、最も一般的なA社のケースを紹介します。社員の実力を「仕事をする能力(職務遂行能力)」に着目して処遇する職能資格制度を基軸に、1)職務遂行能力、2)行動・プロセス、3)成果を評価基準とし、そのうち「能力」は昇給・職能等級に反映し、「行動・プロセス」と「成果」は5段階で評価し、賃金や賞与に反映します。5段階の評価が上から3段階以内なら賃金はアップし、4段階目であれば据え置き、最低評価なら賃下げで2年連続して評価が最低ランクなら、降格もありえます。 
2. 評価基準のフレームとして、職能等級と行動評価および業績評価基準が設定され、達成した成果の度合いを重視する観点から、評価割合は業績評価70%と高くしています。 
3. 社員は自らが業績目標を設定し、多面評価によりその発揮した能力と成果に対し、タイムリーに処遇に反映されます。 

(3)成果主義賃金への切り替えに伴う法的問題 
成果主義賃金導入の際にまず問題となるのは、就業規則による労働条件の不利益変更の問題です。成果主義賃金の導入など、賃金制度を変更する場合、その変更により従来の賃金額より減少する者については、労働条件の不利益変更と判断されることになり、有効と認められるためには、高度の必要性と変更後の規定内容の合理性が認められなければならないとされています(労働契約法9条・10条)。 

問題の中心は、賃金制度の変更に高度の合理性があるかといった経営的な事情の問題より、新たに導入された賃金制度において職場の基準、資格の格付け、査定の基準といった新賃金制度の核心をなす具体的な賃金の決定、計算の内容が合理的にできているかどうかにあるとされています(「成果主義を考える」東京都産業労働局編)。 

(4)運営上の留意点について 
成果主義賃は個人間の競争と協調の上に成り立つフェアなものでなければならず、行き過ぎは禁物です。そのためにも、公正な評価が成果主義賃金の成否を分けるといっても過言ではありません。ポイントは次の3点です。

1.評価結果をどう社員に開示し、納得してもらうか。

2. 制度の仕組み、評価基準、運用ルールをオープン化して透明性を高くする。 

3. 評価者の評価能力を高めるなど。

以上、あなたの言う成果型職能資格制度の概要を簡潔に申し上げましたが、不明な点がありましたら、ご一報ください。

Q.7 試用期間中の時間外手当

入社に当たり、3カ月間の試用期間を設けられ、毎日約2時間の時間外労働が発生しています。この残業代について、「試用期間中は、時間外手当は支給しない」と会社側から言われましたが、これは問題ないのでしょうか?

Answer

●時間外労働の割増賃金の件について 
「試用期間」はほとんどの会社に存在しますが、時間外労働・休日労働の割増賃金は「時間外労働を行った時間に対し25%以上・休日労働の場合は(法定休日〈週1回〉)35%以上」を支給することが「労基法(37条)」によって義務付けられています。この割増制度は、就業規則や賃金規定に定めがなくても、当然に請求できる権利です。そもそも使用者には時間外労働時間、休日労働時間を正確に把握し、把握した時間に従って賃金を支払う義務があります(労基法108条、労規則54条1項)。 

従って、会社が言う「試用期間中は時間外手当を支給しない」は許されないことであり、労基法違反にもなりますので、会社側に請求できます。 

もし、話し合いがこじれるようでしたら、最寄りの労基署に相談してください。専門の職員が相談に乗ってくれ、場合によっては会社に指導や勧告をしてくれます。なお、労基署へ相談や申告をしたことにより、会社からあなたに対して解雇、その他不利益な扱いをしてはならないことも、労基法に規定されています(労基法104条)。

Q.8 長時間労働に年休(年次有給休暇)も休日手当もなし‥‥‥

2年ほど同じ会社でアルバイトをしていますが、1日12時間以上、週に7日間働かされています。さらに休日手当もなく、年休もありません。クビになるのも怖く、何も行動できないのですが……。どうしたらよいでしょうか?体力も限界です。

Answer

相談内容は、「労働条件が法律違反ではないか」ということですね! あなたの相談内容を踏まえると、明らかに労基法違反です。 

(1)労働契約を結ぶとき、労働条件をはっきりとすることが大切 
あなたは、現在勤務している会社にアルバイト採用が決まったとき、「労働契約書」を結びましたか? ある会社に就職が決まると、就職しようとする人と会社(使用者)との間で、賃金や労働時間、休日・休暇などについて、こういう条件で雇う、雇われるという約束をします。この約束のことを「労働契約」といいます。労働契約を結ぶときには、毎日の給料・労働時間・休日・休暇など、あらかじめ決めておかなければならないことがたくさんあり、それらを全て口頭で済ませてしまうと、後に言った・言わないのトラブルのもとになりかねません。そこで労基法では、使用者に対して労働契約を結ぶときには、労働者に次の事項で明示することを義務付けています(労基法15条)。

1. 労働契約の期間に関すること 

2. 仕事をする場所、仕事の内容 

3. 仕事の始めと終わりの時刻・残業の有無・休憩時間・休日・休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項など 

4. 賃金の決定、計算と支払いの方法、締め切りと支払いの時期 

5. 退職に関すること 

また労働契約法でも、「使用者は労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする」および「労働者及び使用者は労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとする」と規定しています(労働契約法4条)。そこで会社には、労働条件や職場の規律などを定めた「就業規則」がありますので、会社に就職したら就業規則をよく読み、労働条件がどうなっているかを確認しておくことが重要です。使用者は、雇用形態(アルバイト・パートタイマー・臨時社員など)に関係なく、労基法を遵守する義務があります。 

(2)パートタイマー(アルバイト)にも、労働法は適用される 
パートタイム労働法でいう「短時間労働者(いわゆるパートタイマー)」とは、同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べて、1週間の労働時間が短い労働者をいいます。その短さの程度は問いませんので、パートタイマー、アルバイトなど、呼び名は異なっても、前述の条件を満たせば、全てパートタイマーになります。  パートタイマーも、労基法上の労働者(9条)に該当しますので、通常の労働者と同じように労基法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働法が適用されます。 

(3)労働時間は1日8時間、週40時間制が原則 
使用者は、労働者に原則として1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはなりませんし(労基法第32条)、休日を原則として週1回以上与えなければなりません(労基法35条)。原則の例外として、臨時的・一時的なやむを得ない必要がある場合は、法的労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働をさせたり、法定休日(週1回)に労働させることができます(労基法36条)。しかしその場合には、36協定の締結、届け出と割増賃金の支払が義務付けられます。 

(4)時間外労働、休日労働・年次有給休暇 
前述したように、「パートタイマー、アルバイト労働契約」であっても、労働法の適用が義務ですので、法定労働時間(1日8時間)をオーバーして働いた時間(残業)、法定休日(週1回)出勤は 割増賃金が保障されます。 

あなたの労働契約は「アルバイト契約(非典型)」のようですが、労働時間の実態は典型社員(正社員)以上の内容となっています。

時間外労働、休日労働の割増賃金は以下の内容が適用されます(労基法第37条第1項)。 

通常の時間外労働(残業)と深夜割増率(午後10:00~午前5:00)は2割5分以上で、休日は3割5分以上となっています。割増賃金の請求についてですが、過去2年間遡及して請求できますが、それ以前の分は、時効となります。 

請求の際は、タイムカード・出勤簿などで管理している場合は容易に計算できますが、自分だけの管理の場合は、手帳などで管理している(時間外・休日労働実態表)ものを整理し算出することが重要です。 

休日は、労基法が義務付ける法定休日とそれ以外の法定外休日に分けられ、法定休日は週1回の休日が原則です。法定外休日は労基法では義務付けられていないが、労働契約で設定されている休日をいい、国民の祝日や週休2日制の場合のいずれかの1日がこれに該当します。 

年休(年次有給休暇)については、使用者は労働者を雇い入れてから6カ月間継続していて、かつ、全労働日(雇用契約や就業規則で労働日として定められている日)の8割以上を勤務した労働者対して、少なくとも10日間の年休を与えなければなりません。10日間の年休は何回かに分けて与えても、まとめて与えてもかまいません。同じ会社で働き続ける場合には、少なくとも最高20日間になるまで勤務年数に応じて加算した年休を与えなければなりません(労基法第39条第1項、第2項)。

あなたの場合は、典型社員と同じ労働時間勤務していますので、「短時間勤務労働者(パート・アルバイト)」契約(通常勤務者の4分の3以下の労働時間)の取り扱いは適用されません。 

(5)今後の対応 
あなたは、使用者に言われるがままに長時間勤務を強いられ、体力的にも限界点に達しているようです。 

そこでどうするかですが、大切なのは労働者であることの意味の認識です。 

今の社会制度の中で、使用者との関係で弱い立場にある労働者を守るために、労基法を中心とする労働者保護法規のそれぞれは、会社側にさまざまな義務付けをし、もし違反した場合には罰則が適用され、さらに労基署がこの法律に違反しないように取り締まりや指導をしています。 

そのためにも、会社のやり方に不条理があれば労働者(あなた)自身が労基法で保護されている権利を正しく理解し、その権利をきっちり行使することが解決の第一歩になりますので、まずは、あなたが勇気をもって使用者と話し合い労基法を遵守するよう訴えるべきです。それでも解決しないようでしたら、労基署に告発することをお奨めします。専門の職員が相談に乗ってくれ、場合によっては会社に指導や勧告をしてくれます。 

告発者を「解雇や差別的扱いをすることは」法的に禁止(労基法104条)されていますので、勇気を出して行動してください。 さらに相談したい場合は、面談も可能ですので出向いてください。アドバイザーが親身になって相談に応じます。

Q.9 残業代の算定基礎賃金は?

年俸制の契約社員で、給与を16分割してボーナスとして2カ月分ずつ支給してもらっています。残業代の算定基礎賃金は、人事の説明では「年俸の16分の1が基礎となる」とのことでしたが、年収の12分の1が正しいのではないでしょうか?

Answer

ご相談は年俸制と割増賃金の問題になり、改善に向けての会社との話し合いに当っては法理が重要になりますので、それを含めアドバイスします。 

(1)年俸制について 
年俸制は、労働者の能力や業績に応じて年間ベースで賃金を決定しようとする制度とされていますが、明確な法解釈があるわけではありません。前年の実績により翌年の年俸額を決定するというケースが多いように、労働時間の長さがどうであったかということは、あまり問題にならず、その意味では時間外労働・時間外手当にはなじまない制度といえるかもしれません。 

しかし、労基法は逆に労働の質的な側面については問わず、もっぱら労働の長さをとらえて規制する立場をとっていますので、年俸制を導入した場合でも実際の労働時間が1週(40時間)または1日(8時間)の法定労働時間を超えれば、時間外手当(残業代)を支払わなければならないことになります(労基法37条1項)。 

また、賃金の毎月払いの原則も適用されますので(労基法24条)、年俸額を分割するなどして賃金を毎月支払う必要があります。実際の運用は様々で年間ベースで決定した賃金総額を12分し、12分の1の額を月の賃金としたり、16分して16分の1を毎月の賃金とし、残りの16分の4を年2回の賞与としたりする方法や賞与を除いた年俸額だけを決定するのもあります。 

(2)年俸制と割増賃金(残業代)について 
年俸制の労働者であっても時間外、休日労働や深夜労働を行わせた場合には、法定の割増賃金(時間外と深夜労働の割増率は2割5分以上、休日労働の割増率は3割5分以上)を支払わなければなりません(労基法37条)。残業代を支払わなくてもよいのは、次の場合です。 

1. 監督もしくは管理の地位にある人の場合(労基法41条2号)。 

2. 8時間以内の「みなし労働時間制」が適法に導入されている場合(労基法38条の3)。

3. 年俸額のうち、いくらが割増賃金部分なのか明確に定められている場合、すなわち割増賃金(時間外労働)が通常の労働に対する賃金部分と明確に区別されている場合には、その割増賃金相当額に達するまでの時間外労働に対しては別途割増賃金を支払う必要はありませんが、この場合も「年間○○円」では足りず、月ごとの割増賃金額がいくらであるかが明確になっていなければなりません。 

なお、年俸制について、あらかじめ額が決定している賞与については、割増賃金の算定基礎から除外することはできません。たとえば賞与を含めて年俸額を決定し、年俸額の16分の1を毎月支払い、16分の4を年2回の賞与として支払っている場合には、基礎賃金は年俸額の16分の1ではなく、12分の1として計算します(労働省通達78号 平成12年3月8日)。 

(3)対応策について 
以上のとおりで、会社が基礎賃金を16分の1としているのは誤りです。アドバイスを根拠に会社と話し合い、改善を求めてください。その場合、あなたの他にも疑問を持っている人がいると思いますので、できるだけたくさんの仲間に呼び掛け、全員が一丸となって会社と話し合う方が安全であり、得策でしょう。 

会社との話し合いがつかない場合は、別の方法(労基署や労働組合の活用)をアドバイスしますので、再度ご相談ください。

Q.10 通勤定期代について教えて!

通勤定期代について教えてください。お客様のところに常駐することになり、通勤経路の変更とともに3カ月分の定期代の申請をしたところ、翌々月に支給するとの回答でした。2ヵ月分が後払いになるため当月の支給をお願いしましたが、事務処理が煩雑とのことで断られました。通勤費は賃金の一部であるため、延滞になるのではと、納得がいきません! 就業規則も非公開です。

Answer

ご相談は賃金である通勤手当の支給方法の問題になりますので、法的根拠を含めてアドバイスします。 

(1)賃金の定義と賃金支払いの原則 
賃金とは、使用者が労働者に労働の対償として支払うもので(労基法11条)、原則として、1)通貨で、2)直接労働者に、3)その全額を、4)毎月1回以上、5)一定期日に支払わなければなりません(労基法24条)。 

(2)賃金の体系 
賃金は基本給と諸手当からなる所定内賃金と所定外の労働に対して支払われる所定外賃金(時間外手当、休日手当、深夜手当など)に大別され、所定内賃金の中の諸手当は、役職手当、技能手当、交替手当などの仕事手当と、家族手当、住宅手当、地域手当、通勤手当などの生活手当が代表的なものです(『労基法』〈第5版〉 菅野和夫著)。

(3)通勤手当の法的性格 
就業規則などにおいて、公共交通機関の定期券代金に相当する金額の手当を支払う旨が明記されているような場合には、一般的に労基法11条の賃金と考えられ(労働基準局長通達130号 昭和35年1月18日)、労基法24条の適用を受けることになります。 

以上が、通勤手当に関する法律の決まりになります。 

(4)対処策 
そこで、ご相談の件ですが、次により、対処してください。 

1つ目は、就業規則の通勤手当支給規程の確認です。通勤手当は就業規則の定めによりますので、支給額、支払方法がどうなっているか確認してください。6カ月の定期乗車券の購入に要する額、ただし、業務上の必要があるときは3カ月の定期乗車券の購入に要する額とすることができるとの定めがあれば、これに従わなければならないでしょう。 

2つ目は、就業規則の周知義務です。使用者は、就業規則を常時各作業場の見えやすい場所に掲示するか、備えつける、または書面を労働者に交付するなどの方法によって労働者に周知しなければなりません(労基法106条)。就業規則(給与規則)の非公開は労基法違反ですので、会社に提示を求めてください。 

3つ目は、会社との話し合いです。あなたの場合、通勤経路の変更は業務の都合によるものであり、また、一般的に通勤経路の変更は、通勤手当の返還というケースも出てきますので、事務処理の煩雑(3.6カ月単位の支給)とは別の問題だと思います。通勤定期券の払い戻しは1カ月単位の返還となり、1日でも喰い込むと返還となりませんので、注意が必要です。 

さらに、業務の煩雑が理由で定期券代金の支払いが遅延することと、その間の通勤費の扱いが明確になっていません。払い戻しの返還金で、3カ月分の新定期券の購入の有無や個人の立替での購入など柔軟な対応や、会社の責任の所在を確認することも含め、事務担当者とよく話し合い、円満解決してください。ご不明な点がありましたら、再度ご相談ください。

Q.11 賃金支払い期日について

給料日が25日なのですが、23日が祝日で24日が土曜日、25日が日曜日の際は、前倒しの22日に支払われると思っていました。会社に聞くと26日に支給するとの返事がありました。 通常であれば、22日になるのではないでしょうか? 会社が言っていることが合っているのでしょうか?

Answer

相談内容は、賃金支払期日についてですね! 
賃金支払いの5つの原則についてアドバイスします。 
賃金は原則として、1)通貨で、2)直接労働者に、3)その全額を、4)毎月1回以上、5)一定期日に、支払わなければなりません(労基法第24条)。

(1)5つの原則の内容 
1)通貨支払いの原則 
賃金は、法令または労働協約で別に定めがある場合を除き、通貨で支払わなければなりません。口座振り込みによって賃金を支払う場合には、一定の要件(労働者の意志に基づき、労働者の指定する本人名義の口座に振り込まれること、賃金の全額が所定の支払日の午前10時までには払い戻し得ることなど)を満たしていなければなりません。 

2)直接支払いの原則 
賃金は、労働者本人に支払わなければなりません。労働者が未成年の場合にも、親や親権者に支払ったり、代理人に支払うことはできません。 

3)全額払いの原則 
賃金から、所得税や社会保険料など法令で定められているもの以外を控除する場合には、 労働者の過半数で組織する労働組合または過半数を代表する者との間に、労使協定を結んでおくことが必要です。 

4)毎月1回以上の原則と、一定期日払いの原則 
賞与などの臨時に支払われるものを除き、賃金は、毎月1回以上を定めて、支払わなければなりません。 5)一定期日払いの原則 一定期日に支払い日を決めて支払わなければなりません。 

(2)法的判断と対処策 
あなたの質問の「賃金支払期日が休日の場合」の支払い期日についてですが、賃金は一定期日に支払い日を決めて支払わなければなりませんが、あなたが言うとおり、賃金支払期日が休日の場合は、前日に支払うケースが一般的といえます。会社には就業規則があります。その就業規則で賃金支払期日の定めがありますので、確認する必要があります。従って、賃金支払期日が「休日の場合には、その前日に支払うか、翌日に支払う」 と明記されていると思いますので、確認してください(翌日に支払うケースの場合もあるかもしれません)。

Q.12 タイムカードを押してからの残業代は?

会社の決まり事で、タイムカードを一度定時に押してから残業するということになっています。残業代は通常25%増しになると、何かに書いてありました。 タイムカードを押してしまうので残業したという証拠が残っていないのですが、何か解決方法はないものでしょうか?

Answer

ご相談は残業代未払いの問題になりますが、念のため、労働時間に関する法律の決まりを含めてアドバイスします。

(1)労働時間法の大原則(1日8時間労働制) 
1.労働時間は、原則として1日8時間かつ1週40時間を超えてはなりません(労基法32条)。 

2. 休日を原則として、週1回以上与えなければなりません(労基法35条)。 

3. 労働時間は原則として実労働時間(労働者が使用者の指揮監督下に現実に労働を提供した時間)で算出しなければなりません。 

(2)原則に対する例外(時間外、休日労働) 
1.臨時的、一時的にやむを得ない必要がある場合には、実労働時間(1日8時間)原則の例外として、法定時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させたり(時間外労働)、週休制原則の例外として法定休日(週1回)に労働させる(休日労働)ことができます(労基法36条)。 

2. その場合には、36協定の締結・届け出が必要となり、これをすれば協定内容に従って時間外・休日労働をさせても使用者は労基法違反として刑事責任を問われることがなく、また適法に時間外、休日労働をさせ得る時間(日数)の枠を設定できます。 

3. 時間外労働は、1週15時間、1カ月45時間、1年間360時間が一般の労働者の上限基準であり、これに適合しない労使協定が届けられた場合は、労基署は労使当事者に対して、助言、指導を行うことができます。 

(3)割増賃金の支払い(残業代請求権) 
1. 実労働時間が法定労働時間を超えた場合、法定休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時まで)した場合は、その時間またはその日の労働について、通常の労働時間または労働日の賃金の25%以上(時間外、深夜労働)および35%以上(休日労働)の率で計算した割増賃金(残業代)を請求できます。 

2. 割増賃金の不払いは、労基法違反であり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条、120条)。 

3. 使用者には、実労働時間、時間外、休日、深夜労働時間を正確に把握し、把握した時間に従って、賃金を支払う義務があります(労基法108条、労基則54条1項5号)。 以上が労働時間に関する基本的な法律の決まりになります。 

(4)法的判断と対処策 
そこでご相談の件ですが、残業代未払いになり、タイムカードは「労働時間の適正な把握のための基準」(厚労省通達)に示される算定方法なので、それを逸脱する会社のやり方は労基法違反であり、しかも悪質ですので、とうてい許されるものではありません。そして解決に向けて最も大切なことは権利意識をきちっと持つこと、すなわち会社の不条理に立ち向かう勇気です。このことを前提にし、解決方法を2つアドバイスします。 

1つ目は、あなたが直接会社の責任者と話し合い解決することです。アドバイスを参考にして会社にルールを守るよう要求してください。会社との話し合いは、全体の問題であれば職場の仲間とも相談して、職場総体の意思として複数で行うことが良いかと思います。

2つ目は、労基署の活用です。労基法違反を取り締まる行政機関が労基署になりますので、労基署に相談してください。強い権限を持つ職員(監督官)が相談に乗ってくれ、場合によっては、会社に指導や勧告をしてくれます。 

その他労働組合を活用する方法などもありますので、アドバイスした2点で解決できない場合は、再度ご相談ください。

Q.13 退職を申し出たらボーナスを半分返還しなければならないか?

ボーナスが支給された翌月に退職を申し出たところ、ボーナスを半額返還するように言われました。この場合、返還の義務はありますか?

Answer

ボーナス(一時金・賞与)に関する法律の決まりは次のようになっています。

(1)ボーナスの法的性格 
ボーナスは支給するか否か、金額ないし算定方法がもっぱら使用者の裁量に委ねられている恩恵的給付の場合は、賃金ではないが就業規則、労働契約などに支給時期および金額ないし計算方法が定められ、この定めに従って支払われるものは、労働の対価といえる賃金(労基法11条)になります。 

(2)支給日在職要件 
ボーナスで問題となるのは、ボーナス算定期間の全部または一部は就労しながらボーナス支給日に在籍していない者についてボーナスを支給しないという取り扱いが許されるかで、ボーナスの賃金性などから無効とする説と有効とする説が対立しています。

裁判例は、支給日在職が要件として就業規則や労働契約などで明確に定められている場合には、それがボーナスの支給要件であり、その支給条件を満たさない者には支給しなくても労基法24条に違反しないとしています(名古屋地裁判決 昭和55年10月8日)。 

(3)減額・不支給条項 
就業規則などでボーナスの支給条件が明白になっている場合は、ボーナスも賃金で、労働の提供に対する対価には、月例賃金とボーナスとの双方が含まれます。ボーナス算定期間中に労働したにも関わらず、一定の事由(懲戒処分など)によりその対償としての賃金の全部、または一部を支給しない旨を定めることは、労基法91条にいう減額に当たるので、この制限を超えたボーナスの減額の定めは労基法91条に違反することになります(札幌地方裁判所 判決 昭和50年3月14日)。 

また、合理的な裁量の限度を超えて全額不支給とすることは、そのボーナス算定期間において労務を提供しながら賃金を受けないことになるので、これまた違法になります。 

以上のとおり、ボーナスに関して法的に問題となるのは、2)支給日在職要件、3)減額・不支給条項になりますので、あなたのボーナスの支給と退職がこの2点に抵触しなければ、返還に応じる必要はないでしょう。 念のため、就業規則や労働契約にボーナスの支給条件がどう定められているか、確認してください。 

アドバイスを参考に会社と話し合い、決着がつかない場合は、労基署に相談してください。専門の職員が相談に乗ってくれ、場合によっては指導や勧告をしてくれます。

Q.14 残業代の基準はどうなっているの?

残業代についてお尋ねします。会社規定で現場での作業については残業が付きますが、帰社するまでの時間や帰社してからの残業については、その時々で実際の残業時間と異なる手当がついています。どういう基準になっているのでしょうか?

Answer

相談内容は、時間外労働(残業)に対する法令(労基法)の解釈に関することです。以下、簡単にアドバイスしますので、参考にしてください。

(1)労働時間は週40時間1日8時間制が原則 
使用者は、労働者を休憩時間を除いて1週40時間、1日8時間(これを法定労働時間といいます)を超えて働かせてはなりません(労基法第32条)。法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には、36協定(時間外、休日労働に関する範囲の労使協定)を締結する必要があります。 

(2)残業・休日労働命令の根拠 
労働時間は、1週40時間、1日8時間(法定労働時間)が原則です。使用者が労働者に残業や休日労働を命じるためには、あらかじめ会社(工場や営業所に分かれているときはその事業所ごと)と、労働者の過半数が加入している労働組合または労働者の過半数を代表する者との間に労使協定を締結し、これを労基署長に届け出ておかなければなりません。この労使協定のことを、労基法第36条に基づき36協定(サンロク協定、サブロク協定など)と呼んでいます。厚生労働省では、「時間外労働や休日労働は無制限に認めるべきものではなく、あくまで臨時的なものである」という趣旨から、「時間外労働の限度に関する基準」を示しています。 

36協定には、法定労働時間を超えて延長することができる上限時間を記入しますが、その時間は、最も長い場合であっても、この「時間外労働の限度に関する基準」で示した限度時間を超えることはできません。しかしながら、36協定を締結するだけでは、個々の労働者に残業や休日労働を義務付けることはできません。使用者は、36協定のほかに労働協約や就業規則、あるいは個別の労働契約などにおいて、「業務上の必要のあるときには36協定の範囲内で時間外労働や休日労働を命令できる」ということを明らかにしておくことが必要です。 

また、労働者に残業を行うことができないような、やむを得ない理由がある場合には、残業命令は権利濫用になります。 

(3)時間外労働の限度に関する基準(延長時間の限度) 
36協定で定める延長時間は、最も長い場合であっても、以下の限度時間を超えないものとしなければなりません。

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が限度となります。

(4)残業・休日労働の割増賃金
使用者が、労働者を1)法定労働時間を超えて働かせたとき(時間外労働)、2)法定休日に働かせたとき(休日労働)、3)午後10時から午前5時までの深夜に働かせたとき(深夜労働)には、通常の労働時間に比べて法令で定められた割増率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働と深夜労働の割増賃金は2割5分以上で、休日労働の割増率は3割5分以上となっています(労基法第37条第1項)。 

(5)あなたの質問に対する具体的アドバイス
あなたの指摘する「現場からの帰社時間および、帰社後の残業時間のカウントが曖昧で、実際の時間と異なる残業手当がついている」については法令に対して違反しているように思われますので、次のことを参考に精査して会社と対応してください。 

1. 現場への直行、直帰については、交通費の扱いのみが対象となり、自宅などからの移動時間は増加しても通勤時間として扱われ労働時間にはカウントされません。 

2.会社へ出勤した後の現場への移動および現場からの帰社が命じられている場合は、移動時間も労働時間にカウントされ、退社時間が終業時刻を超えていれば、その時間は残業時間となります。 

3. 現場へ出向く場合「出張」とする会社もあり、出張手当などが支払われる場合があります。その場合の移動時間についてはこの限りではありませんので、会社の就業規則などの規定を調べてください。 

会社は、出先の現場や帰社後の残業も含め正確な個々人の労働時間の把握と、それに基づく残業代の支払いの義務があります(労基法108条、労基則54条1項)。精査して間違っているようであれば、法令に従って残業代を支払うよう要求してください。あなたが具体的行動を起こしても、解決が困難のようでしたら別の方法をアドバイスしますので、その経過を詳しく記録し、再度ご相談ください。

Q.15 無断で会社を辞めたら給料はもらえない?

派遣で仕事をしています。先月の初め、派遣元に無断で、仕事を辞めました。その後、給料が振り込まれないのですが、無断で辞めた場合の給料はもらえませんか?

Answer

相談内容は、退職届を提出せず無断で仕事を辞めてしまった場合、賃金は支給されるかどうか……ということですね。まず最初に、ルールを無視し、突然退職したことを会社や同僚に謝罪し、理解を求めることが必要です。

(1)会社には就業規則や職場の規律を保つために服務規程があります。 
あなたは就職したとき、 

1. 労働契約期間に関すること 
2. 仕事をする場所、仕事の内容 
3. 仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無など 
4. 賃金の決定、計算と支払いの方法、締め切りと支払いの時期 
5. 退職に関すること(解雇の事由を含む) 

などの労働条件を確認し、労働契約を結んだことと思いますが、これも職場のルールです(労働契約法4条6条、労基法15条)。 

一般的に、労働者からの申し出によって労働契約を終了することを退職(自己都合退職)といいます。労働者が、ある日突然退職してしまったら、使用者も、また残された同僚も困ってしまいます。ですから、一般的には、就業規則などに「退職の申し出は、退職予定日の2週間前までに申し出ること」というように、あらかじめ後任の手配や事務引き継ぎ期間を見込んで定められています。 

就業規則に退職に関する定めがない場合は、労働者は少なくとも退職予定日の2週間前までに退職の申し出をすることによって、いつでも労働契約を解除(退職)することができます。これは「民法627条第1項」に定められています。 

従って、退職の申し出をするときには、まず就業規則などに退職に関するルールがどのように定められているかを確認し、そのルールに従って事前に上司とよく話し合うのが円満退職の条件です。なお、退職のルールは契約の定めのある労働契約と、そうでない場合は異なりますので注意が必要です。

(2)あなたは派遣労働契約ですので、有期労働契約(期間の定めのある契約)だと思います。 
有期労働契約の場合、会社と労働者が契約期間を定めた上で労働契約を結んでいますから、お互いに契約内容を誠実に守る義務があります。 

契約期間の満了前に退職することは契約違反ですから、契約期間満了前に勝手に退職することはできません。契約期間途中で退職する場合には、なるべく合意解約(退職)できるように、十分話し合うことが大切です。また、残念ながら会社の理解が得られなかった場合であっても、やむを得ない事情があるときに限り、労働契約の解除を申し出ることができますが、それが労働者側の一方的な過失による場合は、会社から損害賠償請求をされることもあります(民法628条)。もし損害賠償請求をされた場合は、その請求内容が適切なものか、損害賠償に応じるべき範囲など、お互いに納得できるまで十分に話し合うことが必要です。 

(3)あなたの場合、ルールを無視して退職していますので、懲戒解雇(制裁)の可能性があります。働いた分の賃金は請求できますが、懲戒解雇になると退職金(支給規程に適しても)の支給は受けられないことがあります。 
いずれにしても、派遣労働をめぐる紛争解決処理については、派遣元・派遣先とも苦情処理責任者が選任されており(職名・氏名・電話番号などが就業条件明示書に記載されている)、実際に派遣労働者(あなた)から苦情の申し出を受けた場合には、密接に連係を取り合い、誠意を持って速やかに苦情に対応しなければなりませんので(派遣法40条1項)、ていねいな態度で責任者と話し合って円満解決してください。今後は、社会人としてのルールは守って、行動しましょう。

Q.16 家族手当はさかのぼって請求できませんか?

子どもが2人おりますが、就業規則で3人まで手当がつくことが最近わかりました。入社してから今まで1人分しかついていなかったので、担当者に今までの3年分の不足分をお願いしたいところ、6カ月分だけ支払うとのことでした。このまま泣き寝入りしなければならないのでしょうか?

Answer

ご相談は家族(扶養)手当の支給の問題になり、一般的には就業規則、労働契約などに支給条件が定められ、この定めに従って支払われるものは労働の対償といえる賃金(労基法11条)であるとされています。従って、家族(扶養)手当申請認定書を会社に提出していれば、会社は受理した翌月分から家族(扶養)手当を支払う義務があります。法的に重要なのは就業規則の定めと賃金であるということになりますので、それらについてアドバイスします。

(1)就業規則作成の意義 
就業規則は、いわば「職場の法」として従業員全員に適用されることになります。賃金、労働時間などは、それによって決められ、人事配置もそれに従って行われ、規律に違反した人には、その定めに従って、制裁が加えられるということになります。就業規則には法律に違反することは定めることはできません(労基法92条1項)。また、労基法で定められた労働条件の基準を下回る条件を定めることはできませんし、規律に違反した労働者に適用する制裁の定めにしても公序良俗に反するような定めをすることもできません(民法90条)。

(2)賃金の定義と支払いの原則 

賃金とは、使用者が労働者に労働の対償として支払うものであって、名称の如何をといません(労基法11条)。また、賃金は原則として(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)その全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定期日に支払わなければなりません(労基法24条)。

さらに賃金の引き下げは労働条件の不利益変更に当たるので、変更するには労働者の同意を得る必要があります(労働契約法8条)。なお、賃金の消滅時効期間は2年になります。

以上がご相談に関する法律の決まりになります

(3)法的判断と対処策 
そこで具体的対処策になりますが、家族手当の支給条件が就業規則に定められていれば賃金になり、賃金未払いは労基法違反(労基法24条)であり、労基法上の罰則が適用されます(労基法120条)。ただ、家族(扶養)手当が1人分しかついていないという原因が、あなたの請求漏れか、あるいは会社事務担当の手続ミスなのか判然としませんので、事実関係を明確にする必要があります。 会社の手続ミスであれば、2年間にさかのぼり、請求する権利があるでしょう。念のため、就業規則の定めを確認してください。

Q.17 試用期間中の契約した以上の残業代が支払われません。

試用期間中、定額で会社計算の52時間分を支給するという契約で入社しました。しかし、実際には52時間以上残業しています。超過した分は試用期間中、支払わなくてもよいのでしょうか?

Answer

ご相談は残業代不払いの問題になりますが、労働契約と試用期間について、正しく理解しておくことが大切ですので、それらを含めてアドバイスします。

(1)労働条件の明示義務
ある会社に就職が決まると、就職しようとする人と会社との間で、どのような条件で雇う、雇われるという約束を交わします。この約束のことを「労働契約」といいます。労働契約を結ぶとき、毎月の給料、労働時間、休日、休暇、残業の有無など、あらかじめ決めておかなければならないことがありますが、それらを全て口頭で済ませてしまうと、後で言った・言わないのトラブルのもとになりかねません。そこで、労働契約法や労基法では使用者に対して、労働契約を結ぶときには労働者に労働条件を書面(労働条件通知書)で明らかにするよう義務付けています(労働契約法4条、労基法15条)。 

(2)試用期間の法的性格 

使用者と労働者の試用期間中の間の契約関係は、労働契約関係そのものにほかなりませんが、本採用に適しないと判断される場合には、解雇しうるように解約権が留保された労働契約であると、一般的には考えられています。また、試用期間中の法的関係は労働契約関係にあることに変わりなく、本採用後の労働契約と同一の契約であるとされています。従って、労働者は労働法(労基法、雇用保険法、労災保険法など)により保護されることになります。

(3)割増賃金(残業代)の支払い義務 

1. 労働時間は原則として1日8時間、1週間40時間を超えてはなりません(労基法32条)。また、休日は原則として週1回以上与えなければなりません(労基法35条)。

2. 原則に対する例外として臨時的、一時的にやむを得ない必要がある場合には、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させたり(時間外労働)、法定休日(週1回)に労働させることができます(労基法36条)。

3. 使用者が労働者を時間外、休日労働させた場合には、その時間またはその労働について通常の労働時間または労働日の賃金の25%以上(時間外労働)および35%以上(休日労働)の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(労基法37条)。 

4. 残業手当の定額支給については、手当額が法に定める計算方法による割増賃金額を上回っていれば定額支給で差し支えありませんが、現実の労働時間によって計算した割増賃金額が手当額を上回る場合には、使用者はその差額を支払わなければならないとされています(大阪地裁判決)。 

5. 割増賃金(残業代)の不払いは、労基法違反になり6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条、120条)。

以上がご相談に関する法律の定めになります。 そこで具体的な対処方法について3点、アドバイスします。 

1つ目は、労働契約の確認です。時間外労働、休日労働に関する事項が労働条件通知書などにどう定められているか確認してください。 

2つ目は、会社に対する残業代の請求です。試用期間中であっても、労働時間法制は適用されますので、あなたの主張を前提にすれば会社に52時間を上回る分の残業代を請求することができます。その場合は、残業請求の裏付けとなるタイムカードや業務記録などの証拠を、可能な限り揃えて、会社と交渉してください。 

3つ目は、労基署の活用です。会社との話し合いがつかない場合は、最寄りの労基署に相談してください。専門の職員が相談に乗ってくれ、場合によっては会社に対し指導や勧告をしてくれます。